●カヴァルの吹き方:第一回「楽器の扱い方」●
 第一回は、カヴァルの扱い方を学びましょう。いや、「学びましょう」と言っても、結局私も初めは何も情報のないところからの手探りでした。ここに書く情報も実のところ、直接カヴァルの演奏者から聞いたもの、カヴァルを扱う楽器店の人から聞いたもの、あるいは他の楽器においての知識を応用して、自分なりに消化したものなのです。聞く人によっても、ちょっとづつ違うことを言れわたりもします。

 今回取り上げる楽器の扱い方にせよ、指遣いや構え方、装飾音の入れ方にせよ、これが正解、これが王道というメソッドは本来的にあり得ませんが、ここではひとまず私のフィルターを通じて解釈した、少なくとも要点は外さないだろうと思われることを書いていこうと思います。より多くの人が、カヴァルに触れるキッカケになれば幸いです。

楽器を組み立てる
 ブルガリアのカヴァルは、3つのパーツに分解することができます。そのため持ち運びがとても楽!というメリットがあります。


写真:3つの分解したブルガリアのカヴァル

 一番上は吹き口のあるパーツ、真ん中は指穴が開いたパーツ、一番下は決して押さえない穴が開いたパーツです。ちなみに押さえない穴は「悪魔の穴」と呼ばれます。ブルガリアの民話によると、笛の上手な羊飼いを困らせてやろうと、悪魔が笛に穴を開けたところ、かえって音が良くなってしまった、ということです。実際この穴は、カヴァルの音質調整に貢献しています。

 組み立て方ですが、どの順番でも良いので、きゅっきゅとねじって繋げればOKです。楽器に負荷をかけないように、出来るだけ接続部に近い場所を持つのがコツです。運良く調整がされている楽器の場合これで終わりですが、そうでない場合いくつか注意点があります。まず、あまりにもきつ過ぎる場合は無理矢理ねじ込まないでください。この場合糸を一旦ほどいて、さっきよりも少な目に巻きましょう。また、あまりにもゆるくてスカスカの場合、そこから息が漏れてしまいます。この場合も糸を巻き足してください。

 使う糸ですが、基本的な考え方としては、「木にやさしい」、「息が漏れない」、「湿度変化に強い」という点を押さえた素材が望ましいです。人によって、ロウに浸した裁縫糸だったり、デンタルフロスを使ったりします。また、巻いた後に固形の油(ブルガリアの演奏家は羊の肝臓から取った油を使うこともあります)を塗ると、湿度対策と息漏れに一層効果的です。もう一つ肝心なのは、ほどけない巻き方です。私のやっている巻き方を図解しますので、一例として参考にしてみてください。

 ●糸の巻き方図解
  ※見やすいように太めの糸を使い、また接続部ではない個所に巻いています。
  • 輪を作り、交点を指で押さえながら周囲を巻きます。(図1〜2)
  • 充分に巻けたら、巻いていた方の糸を切り、先ほどの輪の中に入れます。(図3〜4)
  • 下側の糸を引っ張り、輪の部分の糸を結び目の内部に入れます。(図5)
  • 最後に余った糸を切って完成です。(図6)

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完成図


カヴァルのメンテナンス
 カヴァルのメンテナンスとしては、まずは買った時、その後は月一回程度を目安に、オリーブオイルで内側と外側を磨いてください。これは、湿度変化による割れに強くなるだけでなく、音の出やすさ、音色にまで影響します。もちろん音が出ないことには実感できませんが、塗った直後の吹きやすさ、音のツヤはもう驚くほど違いますよ!特に内側が重要です。私は吹く度と言って良いぐらい、頻繁に塗ってます。

 オリーブオイルは、スーパーの食品売り場で買えます。ピュアでもエクストラヴァージンでも好きなものを塗ってください。オリーブオイルの他にも、人によってはピーナツオイル、オレンジオイルなども塗っているようです(香りが良いとのこと)。化学関係の知識が乏しいのでわかりませんが、オイルの何の性質(比重や融点等)が重要なんでしょうか?どなたか詳しい方教えてください。サラダ油やごま油はどうなんでしょうね?(実験して楽器がダメになっても責任は持てません。)とりあえずオリーブオイルなら、多くの演奏家による使用実績があるので間違いないです。

 外側は、まずオイル用の布で全体に塗って、乾いた布でよく拭き取きます。2枚用意するのが面倒なら、同じ布の両端でも構いません。問題は内側にどうやって塗るかです。塗るための道具は色々考えられますが、「楽器を傷つけない」、「しっかり塗れる」、「使いやすい」という点を押さえていることが肝心です。ブルガリアの楽器職人は、細い木や葦の先に布を巻いたものを使っていました。あ、布はしっかり結びつけてください。でないと、管の途中で取れて布が詰まってしまいます(何度もやった)。持ち運び用としては、丈夫でやわらかいひもの片方に布、片方におもりを付けた道具を作ると便利です。バラして塗るか、継いだまま塗るか?ですが、私の場合普段は継いだまま、たまにバラして接続部分も塗るというペースでやっています。


写真:超てきとーメンテ用品。おもりは単4乾電池。

 吹き終わったら、乾燥した布で水分を取ります。これもオイルを塗るのと同じ道具で良いですが、オイル用は水分を吸収しにくい(水と油と言いますし)ので、分けた方がベターです。また、水分は接続部分にも溜まりますので、バラして拭いた方が望ましいです。もちろん練習途中で、管の中が湿って気になる場合も拭いて構いません。特に裏穴(親指で押さえる穴)から水がたれてくる場合、親指を使う装飾音が決まらなくなるので、そうなる前に拭いといた方が良いです。出先などで万一メンテナンス道具を忘れたとき(もしくは面倒くさいとき)は、吹き口のパーツだけ抜いて手のひらなどでポンポンするだけでも結構水分取れますよ(よだれが手に付くって?)。

 他にメンテナンスにまつわることと言えば、保管と持ち運びですね。これらは、「湿度や温度変化に気をつける」、「楽器同士や硬いものとの接触に気をつける」といった、常識的なポイントを押さえれば、何でも良いです。ちょっと注意する点としては、あまりにもコンパクトで持ち運びやすいため、布か何かにくるんで普通のバッグやナップザックに入れる機会が多いと思いますが、一緒に入れる荷物には注意してください。帰り道で大量に本やCDなど硬いものを買い込んで、ラッシュアワーの電車で帰ったら、吹き口が欠けてしまった、なんてこともあるかもしれません(いや、ありました)。

 以上、私も書きながら改めて身が引き締まる思いです。ついつい面倒になりがちなメンテナンスですが、日本ではなかなか入手が難しい楽器ですし、少しでも長く使いたいですね。あ、ちなみに塩化ビニールやプラスチック製のカヴァルをお使いの方は、上記のメンテナンスは一切意味ないです(先に書いとけって?)。

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